VATE:唐紙の色使いや、構成ってどう感じました?

 

すごいと思いました。何がすごいかって、間の取り方とか、桐の配置の仕方とか。最初に見たのは桂離宮の小桐の唐紙なんですけど、桐の配置がもう…。要はぐちゃぐちゃなんですよ(笑)。なんでこんな置き方してんねん、みたいな。

 

VATE:へー。

 

こっちに飛んだり、あっちに飛んだり。そういう柄がいっぱいあって、冷泉家とかお公家さんがよく使われる伏蝶っていう柄があって、それも変わった配置だなぁと最初は思いましたよね。

 

VATE:余白の使い方とか?

 

そうですね。唐紙って余白の使い方と、そのポジティブなものとの使い方の関連がすごく変わってるんですね。多分それは、西陣でもなければ、西陣の着物や染め物ではあまりわからない。唐紙は抜群におかしいんですよ。

 

VATE:タイポグラフィを見るような目線ですね。

 

そうですね。僕は写実するという技術は無いんです。絵も描けないし。でも物事をそぎ落としていくのはすごく好きで、そっちに目がいちゃうんですね。

 

VATE:印刷や紙のことはどうですか?

 

実践しながら学んでいきました。例えば、普通に刷っていても全然絵の具ってのらないんですよ。いっぱい考えても全然答えが出なくて、色々試すんです。手漉きの鳥の子と機械漉きの鳥の子があったら機械の方がのりやすい。のりやすいけど、のり方が汚いんです。なぜかというと、あまり水を吸わないから、とかね。そういう地道な繰り返しの中で、いろいろと学んでいきました。

 

VATE:そこで相当な修行をされたと思うんですが、いつ独立というのを意識されたんですか?

 

唐紙を作る技術は身につけて、職人として一人でやっていけるようになっても、そんなもの誰も買うはずないんですよ。でも、自分の作った物をちゃんとお客さんに手に取って見てもらえたり、自分が作った物をちゃんと展示したいとは思ってました。そうするには、自分の店を持つのが一番早いというのもわかっていたんですね。意識したといえば、それがそうですね。

 

VATE:実際に独立される時はきっかけがあったんでしょうか?

 

単純に物件を見ては、夫婦でいろいろ話すことが好きだったんですね。ちょうどそんな時期に面白い物件を発見して、悩んだ末に借りることにしたわけです。