フローリアン・クラール
《アリーナのためのクランクフェルト・ナンバー3》2004年
金沢21世紀美術館蔵
撮影:中道淳/ナカサアンドパートナーズ
写真提供:金沢21世紀美術館

「昨日の続きみたいに、今日生きる事が出来ない」

VATE:いままでの経験もいかせますね。

 

そういう意味では直島の経験も、作家の時もそうですけど、いまの21世紀美術館の経験もその両方を全て注ぎ込んで、なにかを考え抜いて作ってみたいですね。

 

VATE:僕の中ではもうそれをやっている秋元さんが想像できるんですけど(笑)。

 

でもこれもやっぱり一人では出来ないですよね。僕は毎回すごくいいパートナーとか、仕事仲間とかそういう人に恵まれてきたんだなと思います。やっぱり感心する人たちが常に周りにいましたね。ベネッセの時の福武さんもそうですし、安藤さんもそうです。自分と一緒に仕事してもらった人、福武さんや安藤さんみたいに有名じゃない、例えば建築会社の課長さんだったりとか、若い人だとか、面白いヤツが多かったですよね。みんな志があったし、有名無名関係なく、すごく強い思いがある。そういう人間がいると、みんながそういう風にものを考えていくじゃないですか。

 

VATE:そうですね。

 

ケンケンガクガクするんだけど、あきらめずに考え抜いて頑張ると、場って意外と良い方向にいきますよね(笑)。直島でもそうだし、21世紀美術館でも市長さんから学校を卒業して間もないうちの若いスタッフも含めて、それぞれが自分のポジションで頑張っているし、見ていて面白いんですよね。地位に関係なく、ああでもないこうでもないとやって。チラシ一枚から全体の構想に至るまで、みんなが集まっていろんな階層で考えるということがすごく大切なんだと思うんですよね。

 

VATE:全体がひとつになっていますね。

 

私は昨日の続きみたいに、今日を生きるという事が出来ないんですよね(笑)。こんなに面白いのに、なんでもうちょっと考えないんだろうかと思っちゃうんですよ。よくこう、もういいじゃないですかっていう人いるじゃないですか。それはよくわかんないんですよね。やっぱりもういいやって思っちゃうと、やめたくなったりするじゃないですか。私も地中美術館にいたら、たぶん給料にしたって今よりよかったですし、悠々自適にやっていけるんですよ。でも、もっと先があるんじゃないかと思ってしまうんですよね。

 

VATE:やっぱり秋元さんはアーティストなんですよね。追い求めていくんですよね、そこはね。

 

すごいものを見てきたというのもあると思いますけどね。日本も海外も含めて、歴史上にすごいものってあるじゃないですか。自分としては地中美術館とかよくできたと思うけど、時折、すごいものを見るとこりゃすごい(笑)。もっと上がいるなっていうね、もっと面白いもんを作ってみたいと思いますよね。