VATE:ジェームズ・タレルに興味があったのはいつからなんですか?
ジェームズ・タレルに限らず、ウォルター・デ・マリアなど直島で扱っている作家は、私自身が大学時代からすごく好きだったんです。またそれだけではなく、とても重要であり、直島にもあっていると思ったんです。そしたら、福武さんもあれはいい作家だからと言ってくれて。で、まぁ一個買ったんですよね。南側に展示するプランを買ったという感じなんですけど。
VATE:プランを買う、という買い方があるんですね。
建築みたいなもんですね。図面を買っちゃうみたいな。
VATE:その作品と安藤さんとは、どう繋がるんでしょう?
安藤さんはそれまであんまり町中で展開する「家プロジェクト」には興味持ってなかったと思うんですけど、一軒目をみて、予想以上に面白かった。「これ面白いわ。俺も一軒やりたいわ。」って。ただ、そんなに古い民家って出てこないんですよ(笑)。すると「俺は新築でいいわ。」と。それで何か自分なりに作ってみる、となったわけなんです。そこで福武さんと話をして、だったらば、ちょうどこの2つをうまく組み合わせたら何か出来ないかなとなったんですね。ただ持っているよりも、実際に形にした方がいいしって。
VATE:なるほど。プランと安藤さんの建築を組み合わせる、というわけですね。
安藤さんと福武さんと3人で場所を探したんですね。で、あそこだったらばサイズも収まるし、もともとお寺があった場所だし、なんかおもしろいんじゃないかっていうね。当時の家プロジェクトはそこにある既存の民家に手を入れるみたいな感じだったので、新築するっていうのはいきなり家プロジェクトじゃなくなってるんですけど(笑)。だから、せめて土地に謂れがあるとか、なにがしか土地の歴史だけでもひっぱりだしましょうよって言って、寺のような精神的な場所として「南寺」ができました。
VATE:すごく良い流れのように思えますね。
いろんな条件が揃ってぽんと出来たんですね。その割にはすごく良くできてるというか、人気があるんですよ(笑)。
VATE:あの作品は身体の感覚から感じることができますもんね。
そうですね、あんな暗い闇の中に放りこまれるって普段の生活では無いですもんね(笑)。
VATE:直島の最初と、地中美術館をつくられた時はアプローチがずいぶんと違いますね。
直島の最初と地中美術館をつくってる時っていうのは雲泥の差でしたよね。私自身も経験を積んできて、ずいぶんと直島での仕事の仕方っていうのは見えてきたし、関わってくれる人との関係もずいぶんと良い形になっていましたね。安藤さんとか福武さんとか、各作家ともやりとりができ、ただ一方的に何かを言われるというのではなく、話のやりとりができる関係になっていったんですね。
なので、地中美術館は自分の中では直島でやってきた仕事の中で圧倒的な完成度をもってると思うんですよね。