家プロジェクト「角屋」
撮影:上野則宏
ベネッセアートサイト直島

VATE:展覧会ではなかったんですね。

 

展覧会って3ヶ月くらいじゃないですか。その期間にあそこまで見に来るお客さんなんて、いないわけですよ。展覧会というのは、ここには向かないと思いましたよね。

 

VATE:「コミッションワーク」というのはどういうものなんですか?

 

安藤さんの建築ってクセがあるというか、すごく個性的なんですよね。なので既にある作品をそこに置いてもですね、場所の方が強いんですよ。絵とか彫刻とか、普通のおとなしい表現のものは負けちゃうわけなんですよね。よっぽどクオリティが高いか、形式としても他を圧倒するようなものじゃないと。

 

VATE:なるほど。

 

安藤さんのスペースというのを、完成された展示のために作られた美術館スペースとして考えるのではなくて、屋外と同じような「場」だと思って、そこにあるクセみたいなものを作品制作に取り込んでいっちゃうような制作の方法というのが一番面白いんではないかと。

 

VATE:それは面白そうですね(笑)。

 

作家を連れてきて、そこで考えて作っちゃうっていうね。それも白い壁だからそこに展示するというのではなくて、もうどこでもいいわけなんですよ。美術的に見て面白い空間であれば。窓だったところをふさいじゃったり、安藤さんにとってみればコンクリートの一番綺麗な壁面のところに、絵をかけられちゃったり。そういう事になっちゃったわけですよねぇ。

 

VATE:でも、それは安藤さんに怒られないんですか?

 

はじめはかなり怒られました。

三宅一生さんからも、こんなことやっておまえ、安藤さんに大丈夫なのかって言われましたね(笑)。

 

VATE:本当に大丈夫だったんですか。

 

ある時から認めてくれるようになりましたよね。たぶん、お客さんも面白がってくれていたんだろうし、中には安藤さんの建物にチャレンジしていくみたいなものが面白い、という風に評価してくれた人もいたんじゃないですかね。

 

VATE:「コミッションワーク」というのは、直島全体を巻き込んで形になるわけですが、

地元の方たちの理解というのは得られたんですか?過疎の島なわけで高齢の方も多いと思うのですが。

 

時間の経過の中で違和感が取れてきた、みたいなところはあると思いますね。最初は地元の人にしてみたら、なんだこりゃって事なんですよ(笑)。

 

VATE:そうですよね。

 

若い人だったらまだしも高齢の方も多いので、そんなに柔軟に「これ、すごい。」ってすぐにはならないですよね。

わかるかどうかって聞くと、やっぱり「あんまりわからない」って言いますよ。