VATE:相対的な価値ですか。
唯一無二のアーティストが自分の表現として生み出す作品というのは絶対的なものですよね。それとのバランスが精神的に全然とれなかったですよね。
VATE:またも美術と社会との関わりで苦しまれたんですね。
ですが、面白くもありました。学ぶことも非常に多かったので。
VATE:ベネッセという会社組織に入られていかがでしたか?
とにかく今まで聞いた事がないようなものを教わりました。そして、普通の人が2時間くらいで出来ることが自分は出来ない。明け方までやって企画書が1つできる、みたいな(笑)。
VATE:その企画書は通るんですか?
いえいえ。上司からはボロくそに言われるわけなんですよ。でもどこが悪いのかわからない(笑)。
VATE:それはつらいですね。
そこでクセがまた出ちゃうんですけど、表現者としてはオリジナリティの高い企画書の方がいいと思っちゃうわけなんです。
VATE:そういうことでもなかった、と。
実務能力を云々される中では、伝わりやすさとか、あるフォーマットに沿って整理されている、とか共通のテンプレートの中でうまく収まっているか、というようなものに評価基準がおかれるんですよね。その前にやっていた雑誌以上にそういう事が求められたのでつらかったですね。
VATE:形式も重要というわけですね。
おまえがどんな風に考えているのかなんてどうでもいいんだ、と。もっと歯車にならないといけないっていうかね。
会社組織の中では一回も話さえしたことがない人と、同じ直島開発というところでは何がしか役割を分担しているわけなんです。
VATE:ええ。
学芸員として入ったといっても、末端の社員なわけで部下がいるわけでも、権限があるわけでもないんです。そういう中である歯車として役割を全うするために、出来る限りフォーマットに合わせるようにしていくっていうのを初めてやりましたね。この経験は後々すごく役立ちました。