江戸後期の瀬戸あめ釉花入にやぶ椿

VATE:このお花は柳野さんがいけてるんですか。

 

僕が生ける花というのは、本当にふざけてるんですよ(笑)。よく怒られるんですけどね。お花やってる人が呆れるような、ちょっと、やり過ぎだったり(笑)。器選びでもたまにやんちゃなものを使いますし、料理でもやんちゃなことをさせますしね。

 

VATE:それが柳野さんの性分なんでしょうね。

 

少年時代、青年時代にやっていたこと全部が溶け込んできてる気がするんです。店をやっていても値段設定とか、お客さんとの対応の仕方というのにしても、大学で勉強していた哲学を思い出しながらやっているんです。

 

VATE:哲学ですか。

 

僕は値段にも理由が欲しいんですよ。自分の中でこうだから、一杯この値段で提供しています。僕とあなたとはカウンターを挟んで対等の立場でいたい。そう思って仕事をしています。

 

VATE:フードのメニューはありますけど、お酒のメニューはないですよね。

それにもなにかポリシーがあるんですか?

 

初めて来ていただくお客さんにはあった方が良いかなぁと思うんですけどね。メニューを決めて、値段を決める事が足枷になるというのはすごく嫌なんですよ。カウンターの店というのは座って、さあ何食べよう、何飲もうって店の人と話をして決めて行く。そういう作業からして欲しいわけですよ。

 

VATE:足枷になるとはどういう意味でしょう?

 

例えばサイドカー。サイドカーってバーには絶対あるんですけど、サイドカー1,050円って書いてしまったら、もっと美味しいサイドカーを作る時にちょっと面倒臭いことになるんですよ。

 

VATE:普段よりも美味しいサイドカーってことですかね。

 

こうこうでこの方が美味しいんで、これ飲んで欲しいんですけど、ちょっと1,400円になるんですけどって(笑)。1,050円って書いてるんですけど、ちょっと1,400円のサイドカー作っていいですか?みたいなね。

 

VATE:時価みたいなものですね。

 

天然もの、自然にあるもの、そういうものを使っている以上、メニューは安定しないですよね。飲み物に関してもそうなんです、やっぱり。