VATE:と、いいますと。

 

もっと自分の中から出てくる何かみたいなね。そういうデザインがあるのに、自分は企業の代弁者で、商品が売れたりすることを目的にやっていた。ただ、そうではないことがあるじゃないですか。たとえば絵本を作るとかね。フォントを作るとか。何かすごく自分に近いところでものを作りたいという、デザイナーの欲求みたいなものが出てきたんですね。それをやらないと死ぬ時にちょっと何か足らんかったなと思うんちゃうかなと(笑)思ったんですよ。

 

VATE:足りないものですか。

 

それで、「よし、55歳になったらパアっとやめたろ」と思ったんですね。

 

VATE:また気持ちいいですね。

 

スポーンて、いい時にやめて、一人になって好きなことをやろうと。そして事務所のスタッフにも話をして、最大限出来ることはしてやって。それで、57歳で会社を解散したんです。

 

VATE:事務所はどうされたんですか?

 

事務所にあるものも、全てスタッフにあげました。本棚も、コピー機も、Macも、好きなもん持って帰れ、と(笑)。

 

VATE:それもまたすごい話ですね。

 

僕はすごくいい時期にやめたんですよ。ところがまわりはそう思ったわけじゃなかった。「奥村は大きい口きいてたけど、つぶれよった」と言ってました。

それが逆に愉快でしたよね。

 

VATE:そして会社を解散された、と。

 

会社のことは税理士さんに相談したら、名前だけ残されたらどうですか、これだけたくさん仕事をやられて、収入もあるしって言ってくれましたけど、もうつぶしましょ!何にも未練ないほうが良いですって(笑)

で、完全にゼロにしたんですね。

 

VATE:すごい思い切りですね。

 

うちの奥さんも、これからは一切うちにお金を入れなくて結構です。自由にしてくださいって言ってくれたんですよ。

 

VATE:素晴らしい奥さんですね。

 

かっこええでしょ(笑)?