VATE:福本さんが、またFHAMSが仕事をする時に心がけていること、というかポリシーとは何ですか。
いつも心掛けていることで一番大きいことは間違えのないことですね。お施主さんは何百万、何千万の大金を支払うわけですよね。それだけじゃなくてそこに夢を抱いて、それを具現化するために依頼して頂くわけで、失敗は許されないじゃないですか。そのためには非常にたくさんの事柄を決めておかなければならないので、 デザインするときでもそれは頭にありますね。
VATE:確かに重大な責任を負いますよね。
線一本ひっぱるだけでも、本当にここでいいのかって思いますよ。常に疑問を抱きながら考えて線を引く。見積における積算にしてもそうですし、工事に入っても職人や業者さんも同じですよね。デザインって格好いいように見せるためのものというのではなくて、何かしらの理由があって初めて生まれてくるものです。なので、好き勝手に線は引けないですよ。この線を引くための理由と言うのはたいていはその物件の問題にあるんですが、その問題をどのように解くかなんですね。
VATE:物件の問題というのは?
問題と言うのは、例えば物件によって様々なんですが、そのお店の内容を考えると不利になる構造をしている時や、どうしても避けられないコスト的な問題や、設備的な問題、様々です。そういう問題の回答を次にどのように見せるかとか、逆に有利になる様にするかが勝負所ですね。だからシンプルな壁がひとつあってもその壁を考えるのに何日も何週間もかかることはよくあります。単に壁を置いとけっていうふうにはできないです。
VATE:必然的に形が出来上がってくるわけですね。
ということは僕は不器用なのかもしれませんが、例えばある物件で「この壁にガラスブロックでやって、ここの床とここの床は変えてみたりとかして、きれいじゃない?」っていきなり言われると苦しいですね。それがお施主さんの要望であればデザインの条件として捉えるので良いのですが、単に「こんな感じでどうよ」って言われると疑問に思います。
VATE:その疑問とは?
だって理由にならないじゃないですか。問題に対しての回答でそういうイメージが結果として出てくるなら良いんですが、考えてゆくプロセスを無視できない性格なんです。許せないんですね。だから床の仕上をこことここは変えてくれって事になったら、壁も考えるし、建て具も考えるし、照明も考えるし、天井も考えるんですね。でもそれぞれ単独には考えないんです。