VATE:仕事をやり通されて自信もついたと思います。
その事務所で仕事を続けていこうと思われていましたか?
就職してから3年はやめないでいようと最初は思ってましたし、就職して2年たった頃はみんな仕事に慣れて緊迫ムード満々のジメっとした事務所の雰囲気もすごく良くなってきていました。なので辞めることはあまり考えてなかったです。ちょうどその頃に1件の住宅の設計とショッピングセンターもほぼ終わっていました。
VATE:そうですか。ではしばらくはその事務所で仕事を続けられたんですか?
そのときにちょうど体を壊してしまい、1ヶ月程休むことになったんです。じっとしてたらいろいろ考えはじめて、もっと面白い場所があるかも知れないと思うようになりました。
VATE:1ヶ月休むって結構ハードですね。大丈夫だったんですか?
精神的にもけっこう辛かったんじゃないですか?
体を壊したといっても腎炎なんで痛くもかゆくもなくて、実家に帰って寝たきりじっとしてろって医者に言われただけなんですよ。でもそうしてたら暇で暇で。ただ血尿が出るくらいですね。精神的に辛いというよりは、ひさびさに学生の時みたいに食っちゃ寝るしかないんでそれはそれで良かったんですけど。休んでても給料もらえたので良かったです。
VATE:じゃあまぁ、長期バケーションみたいなもんですかね(笑)
わはは。ですね。でもそんな具合なんで休んでる間に精華大学で一緒だった友達のところへ遊びに行ったりしてたんです。彼等は西陣に町家を借りて1階を工場にして2階に3人で共同で住んでたんです。みんな雑魚寝して、テレビはこれまた小さいのが一個で、お風呂はみんな仲良く銭湯へ行って、キッチンと食卓はほとんど外部なんだけどそこで飯つくって冬は凍えながら食うっていう生活をしていました。
VATE:そのお友達たちは仕事はどんなことを?
小さなお店の棚とか、看板とかをつくってました。でもそれだけでは食えないんで日雇いに行ったりしながら、クソ貧乏な生活をしていました。で、それを見て「こりゃあ楽しそう」って思いましたね。
VATE:福本さんはそれに惹かれたっていうことなんですか。
彼等は自分達の仕事の中でいろんな失敗をして、ほんの小さな事なんですけどいろいろ悩んで。また違う方法を考えて、また失敗してどうしようもなくなって。っていう所が、僕にとってすごくうらやましく思えたんです。
VATE:なるほど。
会社員だと失敗に対してそれほど責任は追わなくていいですから。だから彼等は誰よりも勉強になってるんだろうなって思いました。なので、僕もこっちへ来ようって思いました。