VATE:ゆっくりとしたスピード、というのはどれくらいなんですか?
1時間に1mくらい織るのが精一杯です。手織とかわらないんです。生産性は…悪いです(笑)。でも、このゆっくりとしたスピードが、ソフトな風合いを生むんですよ。理由はたて糸、よこ糸共にテンションをかけすぎずに織るからです。
VATE:染めはどうされているんですか?
草木染めで染めてます。自然染料は化学染料とはひと味もふた味も違う、やわらかな色が染まります。草木染は、学生の頃から慣れ親しんできましたから、自分で色出しをすることも多いですね。
VATE:自然の染料というと、どういったものがあるんでしょうか?
身近なものではタマネギの皮、とか。山吹色系とか、カーキ系の色が染まりますね。その他に、よく使うのは、茜、丁子、ログウッド、コチニールなどコチニールは、サボテンにつく虫、です。これって、食品や飲料なんかの着色料にも使われているんです。機会があれば、ファイブミニの瓶の裏側を見てください。コチニールって書いてあるから。
VATE:染織という仕事に関してですが、職人的な技術を要する仕事だと思います。
後継者などどのように育てられているのですか?
染織という仕事はいろんな工程があって、分業で成り立っています。一言に職人といっても、染織にはいろんな職人が必要なんです。織る人、染める人はもちろん、織機をつくる人、織機にもちいる道具をつくる人、紋をおこす人、整経をする人等。数え上げたら、きりがない。京都の染織全般をみて、それらひとつひとつの仕事に後継者が育っているか、というと育てられていない、というのが現状です。
VATE:でも後継者は必要ですよね?
そうですね。まずはそれぞれの工程に自分の仕事にやりがいや魅力を感じられるかが大事だと思います。どんなやりがいもてるか、どんな夢を描けるか、ビジョンがみえてこないと、ダメだと思う。
VATE:なるほど。
そのために、自分のかかわった仕事の完成形、つまり製品を知っておくことは、とても大切だと思うんです。染織の仕事にはそこが欠けてる、と思いますね。日々、ものづくりの仕事が一方向に流れていってるだけ、みたいになりがちだから。紋をおこしてくれた人、とか整経をしてくれた人が、それがどういう生地になって、どういう製品になったのか、っていうのは目にしてないですよ。