音楽は格闘技。

VATE:お客さんのエネルギーってやっぱりあるんですか?

どちらかというと、僕は否定的な見方なんですけど。

 

お客のエネルギーってすごいよ。ただ見てるだけでも、ものすごいエネルギー。しかも、食い入るように見られると、さらにすごいエネルギーになる。それで、こっちはそのエネルギーを貰いながらも、今度は倍にして返していかないといけない。

 

VATE:なるほど。お客さんとの闘いみたいなものですか?

 

それとは違うな。自分は武道をやってるから、例えば試合なんかで相手と向き合っても、相手が憎いわけじゃない。試合で相手と立ち向かった時っていうのは相手に対して尊敬する心ってのがある。自分も苦しい思いをしてその場に立ってるけれども、相手もそういう思いをして、そこに立ってる。ここまで一緒にしんどい目をしてきた者同士の尊敬の心というのかな。だから、相手と闘うわけじゃなくて相手の後ろに立ってるもう一人の自分と闘ってる感じ。相手の後ろにいるもう一人の自分を叩きのめすためにやってるようなもんやね。

 

VATE:音楽と格闘技と共通している部分があるということですか。

 

だから、闘うべき相手というのはステージに立った時は客席の一番後ろにいる自分。その辺は格闘技とまったく同じ。だから「音楽は格闘技やなぁ。」と思うのはその辺かな。「自分との闘い」なんて格好いいこと、まぁ誰しも口にする事だけど、本当にそれ以外、何もない。

 

VATE:西野さんはMCとかも人気があるわけですけど。MCはどういう風に考えられていますか?

 

MCっていうのは潤滑剤みたいな物かな。音楽をうまく伝えるため、あとは調子を整えたり、空気を読んだりするための。MCっていうのは自分にとっては芸の重要な部分で、人を笑わせたり、そういう事をしながらあくまで音楽で勝負すると。お客さんはお金を払って席に座れば楽しませてもらえると安心して座ってるから、それを裏切ることは絶対にできんしね。

 

VATE:ステージに立った時は常に五感で感じていないとダメなわけですね。

 

ナチュラルではなくて、常にニュートラル。いつでもロウから、いきなりサードとかトップに入れるようにしてないとダメ。どこのギアにでも入れるようにしてないと。

 

VATE:ニュートラルにするにはどうすればいいんでしょう。そもそもニュートラルってどういう事ですか?

 

ニュートラルっていうのは自分を客観視できる状態にするっていうこと。お客さんの要求をすぐに汲み取れるようにね。自分にとって、音楽を客観的に見れるかどうかの基準っていうのはステージに立ってる自分ではなくて、客席で見てるもう一人の自分。その自分との闘いかな。