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VATE:お仕事しながらですよね?

 

本屋さんではフルタイムで金土と働いて、その後に事務所で広告の仕事をやるみたいな生活を2ヶ月間くらい続けました。本屋さんでは仕入れ方とか本屋のイロハなど本当にいろいろと勉強させてもらって3年前に開業しました。

 

VATE:それは大変だけど、楽しそうですね。

 

楽しいですよ。いつかは100%本屋さんにしたいなと思っていて、今は前段階ですね。まだまだ広告の仕事もやりたい事があるし声もかけていただけるから半分は東京にいますが、ゆくゆくは重心を山に移していって気付いたら東京にいないみたいだね、みたいなことにしたいなと思っています。

 

VATE:生きるための手段としてコピーを書かれてきた側面もあると思うんですけど、とはいえやはり憧れていた仕事でもあるし、今も仕事に対しては憧れていた時のような仕事ができてるという感覚はあるんですか。

 

仕事の最中はないんですけど、でも冷静に振り返ってみると、何かすごい事が出来てるなって。こんな所まで来れたのかっていう山登りみたいな感覚です。その瞬間は全然楽しくないし、やりがいも感じないというか、辛いな、面倒くさいなっていう感情の方が圧倒的なんですけど、自分の作ったものがすごく話題になっているなという事を感じた時に何かやれたかなというのはあります。

 

VATE:仕事が終わった後に、ようやく手応えを感じるというか。

 

そうですね。あとはやはり大人になるとこうやって出会える人も変わってくるし、使えるお金も増えてくるから、行きたかった所にも行けたり、そういう事が出来るということは順調なんだなっていう風に思いますね。458円から始まってなんとかここまで来れたという。

 

VATE:今コピーを書かれる中で渡辺さんの方法論であったり、確信めいたものというのが何かあればお聞かせ下さい

 

相手の話をしっかり聞くという事です。自分の中にあるものより、相手の持っているものを引っ張り出して、それを端的で図太い言葉にしていくというのが自分のスタイルだと思ってます。そのためにもチームやクライアントさんと良い関係を作ること。ちゃんと言いたいことを言ってくれたり、駄目なものを駄目と言ってくれたりという、人とちゃんと対峙しながら、謙虚に出していく。

 

VATE:なるほど。

 

考え抜く。人より考えるという事をサボったら絶対に終わるなと思ってます。多分、僕が書く物量というのは誰にも負けないんじゃないかと。少なくとも同世代には負けていないと思います。いい年して手を真っ黒にしながら書いてるというのは自分の生命線なのかなと。

 

VATE:聞く、ということで気をつけられてることとかは何かあるんですか。

 

自分のことを喋りすぎないというか、相手の話を遮ってまで自分の主張をしない。やはり謙虚でいるという事なのかなと思います。こういう場だから言うわけじゃないですけど、寺田さん(VATE編集)とお会いしてこの人すごいなと思ったんですよ。

 

VATE:なぜ(笑)。

 

聞く力というか、こういう人が京都の奥深さかというか。東京にはいないタイプで。デザインもとても美しくて凄く良いのですが、やはり話を聞くのが上手いんですよね。こういう技とか、佇まいは凄くお手本になるなと思うから人に会う時はちゃんとした格好をする(笑)みたいな事もめちゃくちゃ学んだというか。相手に対して誠実に向き合うという事の所作を勉強させてもらえたので、こういう出会いがあって凄く良かったなと思います。