VATE:ええ。
その方はコピー云々というより、器ごと考える人だったんですよね。この人の考えてることは目線が全然違うなと思って。すごく良いなと思いながら何度かお話をさせて頂いているうちにいつかチャンスがあったら一緒にやろうみたいな事を言ってくださって。そこで気持ちが初めて動いたというか。そこからしばらくして人を増やすみたいな話を聞いて、結局その会社に引っ張られる形で辞めて移籍したんですね。それが29歳の時です。
VATE:なるほど。ようやく移籍出来てどうだったんですか?
移ってみた結果、合わなかったんですよね(笑)。全然フィットしなくて。仕事でアジャストできる部分じゃないところで合わないなと思ってしまったから、半年間で辞めてしまったんです。すなわち1年間のうち2回辞表を書いたっていうことになるんですよね。そこで初めて行き詰まり(笑)。これはとんでもない事をしてしまったと思って、どうしようってすごい数ヶ月悩んで。
VATE:その数ヶ月間は何をされてたんですか?
本当に何にもしてなかったんですけど。でも食っていかなきゃいけないから、何となく自分でやってみるしかないというか。見かねた広告業界の友人が先輩とかに相談してくれて、ご紹介いただいた会社さんとかもあるんですけど、ちょっとなんかもう、もう1度会社に入るのはちょっと気持ちが続かないなというか。
VATE:2回辞めちゃってますもんね(笑)。
出来るところまでは1人でやってみて、駄目だったらどこかにお世話になろうと。それで始まったのが渡辺潤平社という会社なんですね。何の野心もなく辞めてるし、当然、持っているクライアントも無いんですよ。本当に1からのスタートで始めたから最初はもう何でもやります。というか何でもやるけど誰からも仕事は来ない、みたいな感じで(笑)。
VATE:完全に向かい風状態ですね。
でも博報堂時代の先輩やいろんな営業の人が面白がってくれて、こういうのあるけどやってみる?と声をかけてくださって、ちょっとずつ仕事が増えてきたんですね。
VATE:それは良かった。
本当に何もないところから始まりました。お金もなかったし、口座の残高が458円っていう。いまだにその数字を覚えてますけど(笑)。1回そうなってちょっとこれ、本当にやばいなと。
VATE:458円はやばい(笑)。
あとANAカードの審査に落ちるっていう(笑)。本当にいろいろありましたね。その時の恐怖心がすごく強いから、今でも仕事を断れないんですよね。何でもできる限りやりますと。頑張れるから何とか出来ちゃうみたいなことでパンク気味なまま進んでるという感じです。
VATE:そんな時代があったとは想像もできないですね。始められてこの会社でやっていけるかもみたいなのが感じられたのは何年目ぐらいですか
本当につい最近かもしれません。30代はいつかこの波は終わると思っていたし、もうビクビクしながらずっとやってきて。その頃の自分はすごく嫌いなんですけど、ちょっと大きく見せようとしたりとか、存在感を示さないと呼ばれなくなっちゃうんで、ちょっとトリッキーなことを言ってみたり、怒ってみたり必死でした。でも45を過ぎると、いよいよもうそんなに上積みしなくてもいいんだと思えてきて。
VATE:なるほど。
今あるもので残りを気持ちよく戦っていければいい、と思えたのは本当にここ2〜3年かもしれないですね。