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VATE:衝撃といいますと。

 

当時みんなMicrosoftのWindowsを使ってた中で「think different」って言われると、お前らみんな同じでいいのか、みたいな文脈も感じたし、違ったことを考えようみたいなメッセージを超えて、こっち側へ来なくていいのかみたいな感じだったし、企業の中にああいう言葉があるというのはすごいなと。

 

VATE:確かに置いていかれているような気持ちになりますよね。

 

アップルはそれから実際「think different」の商品を出し続けるわけですけど、これはすごいなと。広告表現と言われるジャンルの中で、世に出た商品を表現した、例えば「原材料、コーヒー。以上。」みたいなコピーもあるけど、どういう商品を出したらいいかという企業のあり方を示す言葉があるんだっていうことに気づいたわけですね。

「物があって言葉が生まれる」というよりは「言葉があって物が生まれる」という種類の言葉が存在するんだと。今でいう企業ミッションとか企業パーパスとか言われるものですけど、そういうものをやれるようになりたいなとその時に思ったので、僕にとっては大きな出来事でしたね。

 

VATE:確かに一番根本というのか、最上位というのか、発想の源がその言葉に集約されているわけですよね。

 

そうそう。

 

VATE:その後はどのような感じでしたか?

 

少しずつ大きな広告賞とかを取ることができたりして、ちょっとは社内でも知ってくれる人が増えてっていう感じでしたけど、そこから5年ぐらいは結構苦労してた気がしますね。

 

VATE:どのような苦労を?

 

今もう25~26年やっているのでクライアントさんから最初にオリエンを聞くと大体方向は定められるんですけど、当時はまだやり方が定まってなかったので当然一つの仕事にものすごく時間がかかってましたね。

 

VATE:方法論が見えなかったと。

 

あの頃の自分を思い出すと2つぐらいのことをやっていて、今で言ったらコンセプトってことだと思うんですけど、その仕事のテーマとなるキーワードを決めようっていうことと、もうひとつは超パーソナルな思いを書いてみようっていう、どちらもやってましたね。

 

VATE:パーソナルな思いとは。

 

自分はこう思う、自分はこうあって欲しいというようなパーソナルな言葉を書いてみようってことですね。あとは世の中にとっての商品のテーマを見つけ出すこと。

 

VATE:なるほど。

 

例えば銀行の仕事が来たんですよね。よくあるアプローチで言うと、「信じられる銀行へ」みたいな風に行くんですよね。銀行にとって大事なのは信頼だ、みたいな。ただ僕が競合プレゼンで勝った時のテーマはお金、つまり銀行というよりはお金であると。そしてお金は未来であると。

 

VATE:より本質的なところを自分の思いに乗せていくわけですね。

 

お金が例えば100万円あれば、100万円分の自分の何かを未来に変えられるわけですよね。旅に行くもよし、美味しいもの食べるもよし、車を買うもよし。だから、銀行というのは人々の未来について語るべきじゃないですか?その上で、ちょっと20世紀の未来と違って21世紀もう今だとだいぶ怪しいけど、未来が空色・バラ色っていうよりはちょっと曇り空になりかけてきたという。