VATE:表現といっても職業として探すのはまた難しそうです。
表現に関わることをやりたいなと思ったときに、広告会社というものがあって、そこにコピーライターという人がいるぞっていうことに気付いたんです。気付いたところで、コピーライターになれるかっていうのはこれまたすごく狭き門だっていうのは知ってたんですけどね。なんですが、必死で受けたら何とか入れてクリエイティブに配属され、新卒でコピーライターになれたんですよ。
VATE:就職の前に大学を選ぶ時にも「表現したい」、みたいな気持ちがあったんですか?
そうかもしれないですね。それこそ美術の先生は美大も考えてみたら?って言ってくれたんですけど、それはまたそれでいや、なんか興味はあるけど自分がずっとやっていけるだけの覚悟とかは出来ないなって思ったんですよね。
VATE:絵を描いたり、デザインで表現したりは無理だと。
そうなんですが、やっぱり「言葉」。言葉は本当に自分が親から授かったんだと思うんですけど、中1のときに新聞社の作文コンクールで優勝したりとか、高3の時に駿台予備校の論文模試ってのがあるんですけど、全国で7位になったりとか。あれ、俺は「言葉」で何か表現できるんだな、みたいな感覚はあったんです。
VATE:原田さんの近くに「言葉」があったと。
大学入試もいろんな問題の形がありますけど、論述とか小論文とかがあるところしか受かってないんですよ僕。だからもう、キャプテン翼は古いけど「マス目は友達」みたいな感じなんです。今でもそうですけど。
VATE:小さい頃から本を読んだりとかで言葉が近かったんでしょうか。
それが全く読んでなくて。
VATE:読んでないんですか(笑)。
本を読め読めって親に言われていたんですけど、それは嫌で(笑)。それよりはいっぱい漫画を読んで、音楽を聴いて、アニメを見て、映画を見てました。本を読み始めたのは、将来なにがしたいのか自分でわからなかった高3の時くらいからですね。
VATE:どういう本から読まれていったんですか。
夏目漱石っていう有名な文学者がいますよね。ただ、漱石の小説ではなく講義・講演をした講演録っていうのがあって、そこで「私の個人主義」っていう本があるんですけど、それがすごく面白かったんですよね。
VATE:それはどういった内容なんでしょう。
個人とは何か、社会とは何かっていうことを彼が考えているんですけど、こんな風に「何々とは何か」って考える事は根本的だし、面白いなって気付いたんですよ。
VATE:考えることが面白いと。
大学でも倫理学っていうものをやったんですけど、そういう哲学的なことが好きだったんでしょうね。いろんな言い方がありますけど「何々とは何か」って問うてみて、新しい定義とか新しい意味を見つけていくっていうのも一つ哲学らしいところなんですけど。そういうのが面白いなと思ったんでしょうね。