VATE:なるほど。
何かカチッとした物体物理じゃなくて、「言葉」という柔らかいものだったり映像表現という自由なもので人が動く、感動するっていうことに興味があったんですよね。だから音楽もやってたし、そういう部分で仕事ができたらいいなと思ったときに、映像とか音とか言葉を総合的に使っている広告が魅力的に見えた。っていうことだと思うんです。
VATE:もう全部詰まってますもんね。
そうですね。もう全部詰まってる。ちゃんとやろうとすると、こんなに奥が深くて難しいのかとは思いましたけど。
VATE:それで広告代理店に入社されます。
そうですね、新卒で博報堂に入りました。
VATE:博報堂に入られてからは、実際にどんなことをされていたんですか?
コピーライター配属になったんですね。広告の中で機能する言葉を考えるっていうところですよね。だから当時は、今もそういうスタイルでやってる人はほとんどいないような気がするけど、原稿用紙に字を書いてました。例えば新聞広告、テレビのキャッチフレーズっていうものが、広告の中心になって動いてたので、広告の中心になるような言葉っていうのを、いっぱい考えようとしてましたね。
VATE:指導される先輩、みたいなのがおられるんですか?
もちろん僕も先輩についたんですけど、先輩がめちゃくちゃ忙しかったんですよね。重い仕事をやってて。
VATE:重い仕事とは?
やっぱり10年目とか20年目の人がやる仕事って最終的に広告の言葉、世に出る言葉を書く前に、この商品とは何だろう?とかこのブランドとは何だろう?っていうところにすごい知恵が使われてるわけなんですよそれこそ、そのブランドの歴史とか、市場における競合がこういて、世の中がこうなってるみたいな結構そういう部分が、年とともに仕事の中心にはなってくるんですよ。先輩はそういうところを結構やってたので、大きなブランドだから、ちょっとお前ここに入っても多分何もわかんないと思うからって。実際、見ても何もわからなかったんですよ。
VATE:では原田さんが最初の頃にされていた仕事は?
当時、音声が出る電子辞書っていうのがあって、そいつに例えばリンゴって入れると"apple"とか、喋ってくれるわけですよね。その音声が出る電子辞書を英会話の教材として売ったらどうだっていう仕事があって、それのコピーを半年ぐらいずっとやってましたね。
VATE:半年も!
だから暇でした。なんか本当に今の若い人からは考えられないと思うしいい時代だったとも言えるし、逆にそんなんことされたらただの放置ハラスメントだろ、みたいなことになりそうですけど(笑)。
VATE:じっくり時間をかけれたと。
その間にたくさん過去の広告とかも読めたし、見れたし、 1年目ってのは僕にとってはすごく良かったんですね。ただ、同期の人たちがどんどん作品を世に出していたので、焦ったりはしてました。
VATE:そのお仕事は世に出たんですか?
半年後くらいに出ましたね。NHKラジオ英会話の裏表紙に。コピーが「先生をポケットに入れたことありますか」っていうシュールなものでした(笑)。