VATE:長い我慢の時、冬の時代とも言える時期を前向きに、地道に頑張ってこられたからこそ味わえた時間だったのかもしれませんね。
ただ楽しかったバレエが、この時の森田さんにはどういうものに変化していったんでしょうか。
森田さんにとって、バレエとは何だと思われますか?
バレエは私に、深い悲しみや苦しみをもたらしますが、時に、これ以上はないという程の幸せや大きな自由を与えてくれます。それから、バレエという社会の中で生きている人々を見ています。素晴らしいアーティストに出逢うと、そこから世界を見ているような気持ちにもなります。バレエがあるからこそ、自分の存在価値もあると感じられます。
VATE:ミルウォーキーバレエ団と契約されてからの踊り、演技に関してはどのように取り組まれましたか。
以前から私は、踊ること以上に演じることが好きでした。ストーリーを持つ作品の中で、あるキャラクターを演じている時間は、非日常的で、舞台の上に生きていることを感じさせてくれます。
VATE:役柄ってどうやって解釈していくものなんですか?
役の背景を調べて細かくイメージした人間像の中に、自分が入り込んで言葉を語るようになる感覚です。内面をさらけ出しながら同化させていく過程は、自分のコアに突き付けられるような気持ちです。でも、最終的に舞台上ですべてが揃った時、自分のようでいて自分ではない感受性に支配される瞬間が訪れます。
VATE:その瞬間ってどんなお気持ちなんですか?一度味わってみたいですね。
とても神秘的な体験です。またそれとは対照的に、不規則な音色や軸のバランスを崩した動きの中で“役”ではなく、個々の存在意識を求められるようなモダン作品も好きです。私は基本的にはクラシックバレエダンサーですが、そこに“音”と“動き”と“表現”があれば、どんな作品でも挑戦してみたいと思っています。