VATE:奥本さんが音楽で表現したいことってどういうことなんですか?
これはやはり「生きる」とか「命」ということ。
人も、自然も、動植物も、宇宙も、星も、地球も、全ての命あるモノが生きて、死んで、それが次の命の源となって、また巡ってくる。どんなものにも必ず始まりと終わりがあり、終わりがまた次の始まりになる。命が輝けばそれに必ず影が出来ます。そこに目をつぶるわけにはいかない。光りと影は表裏一体なんですよね。そういう哲学というか、死生観というか、命あるモノの光と影の両方、そしてそこに吹く風とか・・・そういうものを音や言葉から、さらりと感じられるように表現しようといつも手探りしてます。
VATE:雄大なテーマですね。
私がBRASIL音楽が好きなのはそういうところ。世界観がすごく雄大なんです。好きな曲の一つにA.C.Jobinの「Wave」ていう曲があって、The fundamental loneliness goes,whenever two can dream dream togetherていう歌詞がある。“二人が共に夢を見れば、人間の根本にある孤独はなくなっていく”ていうような意味ですが、この「人間の根本にある孤独」ていうところがすごい。この歌詞に会って、そうよ、こういうことが表現したいのよ、と思ったんですね。
VATE:なるほど。
でも、こういうことを日本語で書こうと思うと言葉がたくさんいるし、何か堅い。それをどうにかさらっと、でもふっと止まるような音や言葉で表現できないかと思ってます。
VATE:いまは音楽だけで生計をたてておられるんですよね。
でも正直しんどいなぁ、とかこの先が不安だなぁとか思われたことはないですか。
思わない日は無い、という方が正しい(笑)先の不安は、端から想像する以上に現実問題ですから…。でもこの不安も確かに怖いけど、自分のエネルギーがもし途切れたらどうしよう、と思うとそっちの方がよっぽど怖い。まあでもその時は死ぬ時なんかなぁ。
VATE:しかしなお音楽で生きていこうと思われているわけですよね。なぜですか?
やっぱり一番最初にも言いましたけども、震災のことが大きい。大きすぎるくらい、大きいんです。いつでも全てのモノがこの手から滑り落ちてしまう可能性がある。そう思うと毎日毎日、一分一秒がそれ以来本当に愛おしい。一秒も無駄にしたく無い、っていう気持ちがあるんです。
VATE:それだけ大きな傷を奥本さんは負ったわけですね。
いや、傷じゃない。それは違います。本当に大切なものへの畏れを思い知らされた、ということです。明日の朝は無いかもしれない、このまま目覚めないかもしれない、と今でも毎日寝るとき思います。だから、やり残せない、やり残したくない。