VATE:それで、どうされたんですか?
はじめは社内ベンチャー制度のある企業に売り込みに行きました。ですが、企画の良さには納得していただくものの、その程度の売上見込みではうちの商売にはならない、と門前払いでした。その頃から起業を考え始めましたね。丁度、そんな時にニューヨーク勤務を打診されました。とても行きたい街でしたが、一度行けば5年は帰ってこられない。自分でビジネスを立ち上げるのは今しかない、と自分の気持ちがハッキリと固まりました。そして伊藤忠を退社し、ウィル・シードを立ち上げました。
VATE:しかし大手企業を退職され、自らで事業を起こすとなると相当な勇気が必要ではないですか。
そうですね。ただ教育事業を手掛け、「よりよい世の中にしたい」という使命感の方が勝っていました。また貧しいことが必ずしも不幸なことではない、と信じていたのも大きな勇気となりました。家族も特に父親は喜んでくれてましたね。
VATE:設立当初は如何でしたか?
本当に貧乏でしたよ(笑)。10畳の部屋に共同出資者と二人暮らし。月給はそれぞれ所得税がかからないギリギリ8万5千円。毎日、梅干しと牛丼ばかり食べていました。
VATE:後悔はなかった?
子どもの頃は敢えて貧しい生活をさせられていました。おかげで初期の窮乏期も苦にはなりませんでした。
VATE:教育事業を手掛けたい、という想いで起業されたということですから、まずは学校教育現場を回られたということですか?
そうですね。実際に学校に提案に行っていました。現場での反応はすごく良いものがあったのですが、導入するとなると様々な問題があり、難しい側面がありました。また現実問題として、会社の基盤を安定させるためには学校への提案だけを行っているわけにはきません。やはりビジネスとして成り立たせるためには、クライアントとして企業にも目を向けていく必要がありました。