社内会議にて

「貧しいことは必ずしも不幸なことではない」

VATE:学生の社会への無関心さにはどのような理由があると?

 

まず、自らが体験していないことには人は興味を持てないし、頭にも入らない。日本は島国なので何かを体験する機会が極端に少ないというのも理由の一つだと思います。

 

VATE:船橋さんは大学卒業前にいろいろな国を旅されましたが。

 

ええ。大学卒業前にアフリカやヨーロッパ、アセアン諸国を旅しました。一番印象に残ったのはフィリピンのNGOのスタディーツアーです。

 

VATE:どういった点が印象に残ったんですか?

 

日本人は貧しい人たちを助けようと思っていくわけです。でも、自分たちよりよっぽど心の豊かな人たちに触れて、「貧しいことは必ずしも不幸なことではない」とショックを受けて帰ってくる。いろんな世界を見るうちに、「日本の常識は世界の常識ではない」という当たり前のことに気付いていくんですね。

 

VATE:なんだか、そのような話ばかり聞いていると日本にはあまり良いところがないようにも思えてきますね。

 

いえ、決してそうではありません。

日本人の持つ「勤勉さ」「知力」「人間性」は世界のトップレベルです。特に人間性では独特の個性を持った世界のさまざまな人種の中間にたてるバランス感覚も兼ね備えています。日本は経済的にも恵まれ、充分な教育とチャンスに溢れた国です。私はそういった意味で日本は世界平和や発展の鍵を握ると実感しています。

日本ほど可能性があり、その役割を担える国はない。今の日本に足りないのは、その可能性に気付くことだと考えています。

 

VATE:なるほど。私を含め、個人個人がその可能性に気付かなければならないですね。

さて、その後、船橋さんは伊藤忠商事に就職されますが、商社を選ばれたのは何故ですか?

 

それもやはり、社会の役にたちたいという気持ちからです。貧しいことは不幸なことではないですが、最低限の衣食住やインフラはやはり必要だと実感していました。ですから、インフラ事業に携わりそうした世界の国の人々の役にたちたいと思ったわけです。