伊豆大瀬崎の風景
ナショナルジオグラフィック誌
2001年1月号「日本の海」特集より

VATE:日本の近海にそんな環境があるなんて、知りませんでした。

 

日本の海はどこに潜っても印象深いところばかりです。透明度の高い海というのは実は生物量が少ないということで、案外最初は誰もが感動するのですが、22年6500回も潜っていると透明度が高くってきれいっていうのはおもしろくもなんとも感じなくなってしまいます。それよりもそこに生きる生き物や生態系、絡み合って生きているわれわれを取り巻く環境が見えてくると、毎回のダイビングが新発見で印象深い出来事だらけです。

 

VATE:なるほど。

 

身近なところでいえば、紀伊半島南部(みなべ)など高速を使えば大阪から2時間強で行けてしまいますが、ここのショウガセという場所の水深42mに大量に生息するオオカワリギンチャクという蛍光イエローのイソギンチャクたちの群落は世界でここでしか見ることができません。これは写真展会場を今訪れていただけば映像で流しています。はじめてみたときは感動しましたよ。海の中に一面のお花畑のような環境が突然現れるんで…。

 

VATE:もともとギー・ブルダンの写真から興味を抱いて、入られた写真の世界ですが、

そういう写真と水中写真って異質のものだと思うのですが、その辺りは如何でしょうか?

 

今までの水中写真なら生態撮影や自然環境の記録といった感じで、確かに異質でしょう。でも僕が目指しているものはちょっと違うのです。いまのところその前哨戦というかプレリュードといったところでしょうが、水中といった中だからこそ表現できる可能性はいっぱいあると思っています。そのあたりのプレリュードという点でも今展開中の写真展ぜひ見てほしいです。

僕が言いたいことやりたいことの一端が垣間見ていただけるはずですから。まだかかりの部分ですが…。すでに来年アサヒコムホールで、あるいはキヤノンサロンでやるつもりで構想は練りまくってます。今回の「True Blue」はその可能性の一部を見せているつもりですし、この延長線の先にあるものや、違う水中世界を今後展開するつもりです。

 

VATE:お話を伺っていると、色彩の美しい写真が多いのではないかと思うのですが、

白黒写真は撮られてないんでしょうか?

 

モノクロームの世界というのは見る側に色彩を想像させるということでイメージを膨らませることができると思います。水中世界でもやってみたこともありますし、他のカメラマンが撮っている作品も見ました。でも、フォルムの美しさ、造形美ということは表現できても、そのものが持つ色を知らない人にとってみれば、色を想像できないようです(潜ってライトを当てるという経験ですね)。

 

VATE:なんとなくわかる気がします。

 

僕が考える水中の白黒とは、肉眼で見える景観がそうであるように、ブルーの白青黒の世界だと思うのです。

色を想像していただくという点で自然光を使った作品がそうだと思っていまして、「TRUE BLUE」ではブルーのグラデーションを見せるのも一つの観点ですが、色を想像していただくといった面も持たせたつもりです。原色派手派手な水中写真ではなく…。ゆえに新聞やNHKニュースなどメディアがおもしろがって取り上げてくれているんではないかなと…。ちょっと違う水中写真として。