和歌山田辺湾に迷い込んでいたマイルカ
外洋性の種ゆえ人間と泳いだ例はない。もちろん飼育に成功した例も…

ブルーの限りないグラデーションの美しさに魅せられた

VATE:それだけ夢中になってくると、会社勤めもいろいろと面倒になってくるんじゃないですか?

会社を辞めれたきっかけ、というのを教えて下さい。

 

毎週末お手伝いで契約インストラクターをしていたダイビングショップが、ある時お店をたたんで岐阜に行くという話がでてきまして、その後をやらないかと…。きみならお客さんとの顔つなぎもいらないし、やったらどうかとそそのかされて。自己資金も何もなかったので国民金融公庫から借り入れできたらやりますわ。って返答して申し込んだら、すぐ出てしまってやらざるを得なくなった(笑)。

 

VATE:えらく急な話ですね。で、サラリーマンからショップオーナーに。

 

ダイビングショップをはじめると水中写真を撮る機会がさらに増え、これをライブラリーに入れたりしていたら、雑誌の仕事が入るようになり、広告関連、ムービーなどと仕事の幅が広がり、昔の付き合いから陸上の仕事もできるだろうとカネボウの水着キャンペーンポスターやプロモーションビデオまでやりだしたわけです。現在13年間続けたダイビングショップは廃業。撮影メインの活動に切り替えています。

 

VATE:赤木さんが水中写真にみせられた理由ってなんだと思われますか?

 

まず原点回帰という点で今展開中の「TRUE BLUE」という写真展のメインテーマにもなっているんだけど、ちょっと深い場所にいると自分の周辺から下が濃紺の世界で、徐々に上に視点を変えていくと青からスカイブルー、水色になって真上の太陽を見つめるとそこだけが真っ白というブルーの限りないグラデーションの美しさに魅せられたというのが、最初に深く潜った時の印象でした。

これは今でもその世界に入ると上がりたくなくなる。あとさまざまな生物が織り成すドラマが毎回見られること、原色の世界がブルーの中でライトを当てると現れる点や、22年間6500本潜っていても毎回新しい発見が得られるということでしょうか。

 

VATE:言葉で聞くだけではその美しさはわからないですが、想像を絶する世界なんでしょうね。

いろんな海に潜ってこられたと思いますが、印象に残っているところはどこですか?

 

海外からいいますと、タヒチランギロア。ここは流されるスタイル、ドリフトダイブではいちばんでしょう。自分がスーパーマンになった感覚が味わえて、サメやマンタ、バラクーダなど大物がメジロ押し。ボラボラのマンタとのランデブーやザトウクジラと泳いだことも印象深い。グレートバリアリーフ、フィジー、インドネシアメナド、プーケット、スミラン諸島、パラオ、モルジブ、セブ、など他にも数え切れないぐらい。それぞれが印象深いです。

 

VATE:日本ではどうですか?

 

日本の海でも強烈なインパクトはいっぱい受けています。

例えば黒潮本流でのブルーウオーターダイブなんてのは、海外でもそうそう経験できない透明度だし、そこに現れる生き物もすごい。黒潮は世界で1、2を争う強流で幅55km深さ1kmも流れています。こんな大きな流れが日本沿岸を流れているわけで、こんな国は少ないのです。北は流氷から南は亜熱帯までこんな小さな島国なのにすごい多様性。