photo by YOSHIDA YOKO

テレビ報道とはコミュニケーションの一部である

VATE:そんなことを教わるなんて、なんだか意外ですね。

 

学生というのは「純」なところがあり、国会議員なんてみんな「悪者」と、ついつい決め付けがちですが、それはそれで一面的な見方で、結局は「人による」というごく当たり前のことに気づきました。必要以上に威張らず、かといって媚びず、自分ができる範囲内で毅然と良い活動をする人でした。

 

VATE:そういう生活をしてると、自分も議員になりたいと考えられたのではないですか?

 

正直なところ、ちょっと考えたことがありました。でも、育った環境の影響とはすごいもので良くも悪くも自分は「サラリーマン」の息子なんです。どんなに「平凡」を嫌っても、「最悪の場合の保証」だけは無意識のうちに求めてしまう。でも平凡では足りない。「平凡」ではないけれど、「保証」のある仕事…テレビ局の社員ってぴったり当てはまる仕事ですね。そこで日テレに入社しました。「選択」というのは「あきらめる」ことでもあると思います。

 

VATE:日本テレビに入社され、どんな部署に配属されたんですか?

主にそこではどのような活動をされていたんでしょうか?

 

入社後の配属は報道局社会部でした。完全な予想外でした。

入社した年は「きょうの出来事」の特集を担当させてもらったりしました。まだ櫻井よしこさんがキャスターの頃です。お歳暮商戦のデパートでのレポートや火災現場からのレポートもしました。生放送でのバンジージャンプの体験レポートでは、放送中にしどろもどろになってしまったこともあります。生中継でのレポートは大の苦手で、典型的なズッコケ新人記者でした。

 

VATE:大きな事件などはなかったんですか?

 

明けて平成7年になると大事件が増えました。1月に阪神大震災と地下鉄サリン事件が起こり、新人だった私たちも現場取材や、レポートを頻繁に行うようになりました。泊まり勤務も増えました。現場では自分たちのようなテレビ局の記者が全国に向けてレポートをするというコミュニケーションがある一方、現地の市役所や区役所には親族の安否を知らせる「貼紙」が張ってありました。重要な生活情報が「口コミ」で広がっていく様子を目の当たりにしました。

今思えば、報道やテレビ以外の「コミュニケーション」というもののパワーと重要性を実感した瞬間でもありました。

 

VATE:テレビよりも、場合によっては張り紙の方が力がある、ということなんでしょうか。

 

「テレビ報道」にしかできないコミュニケーションがあります。特に「速報性」ではテレビ報道は圧倒的な強みを見せます。

ですが一方で「各避難所での給水情報」「家族の無事」「炊き出しの場所の変更」…こうした「個別的」な分野では「貼紙」や「口コミ」が圧倒的なパワーを持ちます。「メール」にも「電話」にも「Web」にも、それぞれの強み、弱みがあります。私は震災報道を経験して、「テレビ報道」という仕事は「コミュニケーション」という仕事の一部であると感じました。